責任を背負いすぎない勇気

座右の書

いろいろなことがあるたびに、折に触れて手に取る本があります。

その本とは世界銀行の副総裁まで勤められた西水美恵子さんの著書「国をつくるという仕事」英治出版からの刊行です。

アジア諸国のリーダーとの交流の中から様々な人間模様、リーダーシップのあり方について述べられています。

 

「名君」の引き際

その中で、「国民総幸福量」を提唱し名君と歌われた、ブータンのジグメ・シンゲ・ワンチュク雷龍王4世の「引き際」について書かれている章があります。

雷龍王4世は国民から絶大な支持を受けているにも関わらず、53歳で退位し、若き雷龍王5世に王位を譲ります。

普段冷静な国民から「なぜ辞めるのか」と大きな感情的批判を受けるわけですが(我が国のリーダーとは逆ですねw)、この国王の心境について「あとがき」で田坂広志さんが寄稿した文章、これが素晴らしく、自分は日々の指針にしています。

(前段略)

なぜ、雷龍王は、あれほど人々に慕われながら、あれほど臣下に求められながら、自らのリーダーとしての権限を狭め、リーダーとしての地位を退いたのか。

それは、真のリーダーは、知っているからであろう。リーダーシップというものの最も恐ろしい陥穽を知っているからであろう。

強力なリーダーシップは、それがどれほど優れたものであっても、人々の心の中に、必ず、深い依存心を生み出してしまう。

それゆえ、その強力なリーダーシップが去ったとき、しばしば、その組織や社会、国家の中に混乱が生まれ、ときに、独裁政治が生まれ、ときに、衆愚政治が生まれてしまう。

その過ちを繰り返してきたのが、人類の歴史。

されば、人類は、いつ、その過ちに満ちた歴史に幕を閉じるのか。

それは、すべての人々が、自らの人生を導くリーダーとなる時代を迎えたとき。

その時、我々人類は、その「前史」の時代に別れを告げ、本当の歴史の幕を開ける。

そのとき、我々人類は、この地球上に生きるすべての人々が、自らの人生の主人公となる時代を迎える。

真のリーダーが夢見るのは、その世界。

 

「国をつくるという仕事」(西水美恵子著/英治出版)

から、田坂広志氏による「あとがき」より

 

「依存」に関する問題意識

私自身、まだまだ全く修行中の身であり「真のリーダー」でもなんでもないですが、こうしたことに共感し「すべての人々が、自らの人生を導くリーダーとなる時代」というのを私自身も夢見てこういう仕事をさせていただいているわけです。

その中で思うのは、日々お会いするリーダーの皆様は大変責任感が強く、なにかにつけて仕事や責任を背負いがちだということ。

責任を果たすのは本当に大事なことですが、その丁寧な「仕事ぶり」がもしかしたらフォロワーに「依存」を生じさせていないかという問題意識。

フォロワーに「最後はリーダーがちゃんとやってくれるから心配無用」という安易な心を起こさせていないか、という問題意識。

このことは常に内省する必要がありますし、必要に応じて、フォロワーにもしっかりとリーダーとして立ってもらうための差配が必要です。

 

一方で、あなたの問題意識は「自己都合」でもある

また、一方でこうしたフォロワーの「依存」というものは、別に本人に悪気があってやっていることではなく、リーダーから見て「依存」と見えるだけですので、フォロワー本人に自覚はありません。

あくまでリーダー側から見た「自己都合」。

ですので「依存させないように」と思ってフォロワーに「リーダーシップを取れ、リーダーになれ」と言っても全く効果はありません(むしろ逆効果)。

こういう場面よく見ますが、人間は「リーダーになれ」と言ってなれるほど、単純な生き物ではありません。私がフォロワーだったら、性格悪い人間なので「うるさいなぁ、やってるよ」と言ってシカトしたりします。

こうした状況を動かしていくためには、状況がそういう風になるように仕掛けていくことが必要なのですが、その前提となるのが、圧倒的に責任を背負いながらも、それを背負いすぎない勇気。

自分の状態を俯瞰して、チームのエネルギー状態を見定めて適切な行動を選択していける能力。

そして、その能力を支えるのが、自分自身の中から出る情熱と、自分の中の情熱に囚われず、冷静に状況を俯瞰した上で自分を使う高い視点、そして「仕組み」「構造」を作り上げていくための人間や社会に対する深い洞察です。

 

「何をするか」レベルの議論では底が浅い

こうしたことを考えると、物事を本質的に解決していくためには「どういう行動をとるべきか」という議論はナンセンスであり(状況によってとるべき行動が全く違う)、課題設定を誤ると、何をしても上手くいかないということがだんだんわかってきます。

複雑な状況の中で、この複雑な人間という生き物を動かし、チームとして成果を上げていくためには「何をするのか」ではなく、どのように問題を捉えるか、どのように自分の心を動かすのか、どのように全体を取り巻く構造を認識し、変化させていくのか、という視点を身につけることが絶対に必要なわけであります。

そんなわけで、ビジネス書レベルの具体的なお話を学び続けて「なんか頭打ちだなぁ」と感じている人は、こちらのページを一度お読みくださいませ。

こちらもご参考に。

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2016.01.23

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ABOUTこの記事をかいた人

山田 亨(TORU YAMADA)

現代哲学からコーチングを解釈した視点をもとにクライアントさんと関わり、現実の課題に対応しながら意識の深層からの変化をガイドすることで、単なる現実面での目標達成のみならず、思考や精神のあり方自体を創造的に体質改善するトレーナーをしています。

職業は肉体改造をガイドする「フィジカルトレーナー」にならって、ビジネスパーソンの精神的な体質改善をガイドする「メタフィジカルトレーナー」を名乗っています。

注1:メンタルトレーナーとかスピリチュアル系のコーチではありません。念のため。

注2:余談ですが昔スポーツクラブでフィジカルの方のトレーナーもやっていました。